令和2年(2020)2月、新しい危機の時代の到来とも受け取れる、新型コロナウイルスの上陸がありました。2月27日に発表された政府の感染症対策の基本方針による文化イベントの自粛要請を受けた美術館の一斉休館が決定され、会場となる国立新美術館も2月29日から3月15日まで一般展示は休館となりました。 白日会は、最終的に美術館から利用不可能との指示を受けるまでは、第96回展開催への準備を進めていくという方針をとりました(彫刻部は諸事情諸状況から残念ながら開催を見送ることになりました)。 白日会も含め美術公募団体のほとんどは、搬入作業から審査や展示、開催期間中も含め、会員を中心とした実務で運営されています。当会は、運営業務中はもとより美術館への往来も含め、出来うる限りの新型コロナウイルス拡散防止に努めるよう対応してきました。 本年は、一般出品者253名(275点)の出品で、入選者は215名(216点)、会友推挙は57名となりました。このような大変厳しい世情の中で、昨年同様の出品搬入数に、審査員一同出品者の熱意を受けながらの審査となりました。昨年は記念展として「―白日会中興の祖 伊藤清永―」の特別陳列もあり、落選者90名という大変厳しい結果となりましたが、今回の入選者数の増加は、彫刻部の展示室を絵画部が使用可能となり展示スペースが増加するという前提もありましたが、何より出品者の熱意が審査側に強く伝わってきたことによるものと感じます。入選者の増加により、幅広い作風と年齢層を包括する結果となりました。 推挙者も大変多く出る結果となったのですが、新進の若手作家、長い間入落を重ねて出品を続けて来られた方、やや当会の傾向と異なる作風だが魅力ある制作をされる方等、幅広い方々を当会のお仲間として推挙することとなりました。 これら審査は、出席審査員の内過半数の賛成票と審査委員長の承認により入選や推挙を決定する制度であり、公正に行われます(「白日会の審査と展示、選抜の方法」をご参照ください)。また授賞は、審査員の過半数の賛成から賞候補となった作品を審査会場に一堂に並べて、投票挙手やディスカッションを重ねながら徐々に絞り込み、審査委員長の示唆を得ながら、審査会の総意としての授賞となるような方法で厳正に決定しています。 その上で、中山忠彦会長を筆頭に、「見えるものを通して見えないものを描くこととしての写実」を会是とし、その中でさらに作品の品格や格調の高さを求めていくというのが、白日会絵画部審査委員会の姿勢です。 本審査所感を起草しているのは3月11日現在であります。審査を終え第96回展開催に向けて準備しているところでありますが、今回入選した作品が無事に展示され開催されることを願うばかりです。 白日会絵画部 常任委員会 |
内閣総理大臣賞に推薦 曽剣雄。「メッセージ」と題する背中合わせの女性二人像、1人は洋装で手にスマホをかざし、1人は和装で、万年筆に紙片を手にする。メッセージの手段が新と旧とで対照的。構図構成はフィクション、虚構。だがリアルで現実感を呈する。そこが、この作家の写実の妙というもの。内閣総理大臣賞に推す所以。 瀧 悌三(美術評論家) |
本作は、神話的主題を的確な表現力で描出している。 幻想性と写実性がバランスよく調和し、独自の雰囲気を生み出している。描写力と共に統一のとれた色彩の効果も良い。総体的に高いレベルをみせ、文部科学大臣賞に推すものである。 土方 明司(平塚市美術館館長代理) |
30代後半の作者は、白日会の出品作品では人物の室内の中の人物を連続してテーマにしてきた。今回の作品は「正午」と題された130号の油彩画である。窓から入る日差しが室内に溢れかえるかのような白色の画面は、大振りな筆触と堅牢な構成感覚に支えられながら、空気と光を含んだ存在感を表出している。若手作家による伸びやかなる王道の油彩画の方向性として本賞を授与した。 白日会常任委員会 |